はじめに
こんにちは、アットウェアでアジャイルコーチをしている梶平です。
この度、Lara Hogan著『Resilient Management』の日本語翻訳版『レジリエントマネジメント 荒波に立ち向かい、困難を乗り越えるチームの育て方』が、2025年10月27日にマイナビ出版より発売されることになりました。
当書籍の翻訳には、当社から3名が参加(翻訳チームは4名)しており、個人のプライベート時間を使い、約1年半をかけて取り組んだものです。 「この素晴らしい本を日本のみなさまにもお届けしたい」という想いから始まった活動でした。
本記事では、一翻訳メンバー個人の活動として、この翻訳プロジェクトと書籍の魅力をご紹介させていただきます。
なぜこの本を翻訳したのか
私はアジャイルコーチという役割として、日々様々な組織でチームやリーダーの方々と共に働いています。その中で何度も直面する課題があります:
- 「なぜあの人はこのような反応をしたのだろう?」
- 「どうしたらチームメンバーの成長をもっと支援できるだろう?」
- 「変化の多い環境で、チームの困難を乗り越える力を育てることを、どうやって支援できるのだろう?」
そんな時に出会ったのが、この『Resilient Management』でした。
翻訳のお誘いを受けた時に、これらの課題を解決するためのヒントに繋がるなと感じたこと、同じような課題感を抱えていらっしゃる方のお役に立てる可能性を感じたので、翻訳活動に参加しました。
この本の特徴
1:脳科学に基づいた実践的なアプローチ
本書の最大の特徴は、人間の行動を脳科学の視点から理解するアプローチだと思っています。 例えば、「席替え」という一見単純な出来事。ある人は喜び、ある人は強く抵抗する。なぜでしょうか? 著者のLara Hoganさんは、人間の6つのコアニーズ「BICEPS」というフレームワークを紹介しています:
- Belonging(帰属)
- Improvement/Progress(向上・成長)
- Choice(選択)
- Equality/Fairness(平等・公平)
- Predictability(予測可能性)
- Significance(意義)
同じ刺激でも、人によって脅かされるコアニーズが異なる。だから反応も異なる。この理解が、対話や協働の質を大きく変えると思います。
2:4つの関わり方
本書では、マネージャーやリーダーが持つべき4つの「帽子」について詳しく解説されています。
- メンタリング:自分の経験を基にアドバイスする
- コーチング:オープンな質問で相手の内省を促す
- スポンサーシップ:成長機会を提供し、心から応援する
- フィードバック:具体的で行動可能なフィードバックを共有する
多くの人は「メンタリング」に偏りがちだと言われていますが、状況やメンバーの成長度合いに応じて、これらを使い分けることの重要性を学べます。
3:変化を前提とした考え方
本書のタイトルにある「レジリエント」という言葉が示すように、この本は変化を避けるのではなく、変化の中でいかにチームの立ち直る力を育てるかに焦点を当てています。 タックマンの「チーム発達段階モデル」(形成期→混乱期→統一期→機能期)を紹介しながら、これらの段階は一度きりではなく、変化のたびに繰り返されることを前提としています。
まさに現代の組織に必要な視点だと感じます。
翻訳で大切にしたこと
翻訳にあたって、私が最も大切にしたのは「読者の方がすぐに実践できること」です。
- 専門用語をできるだけ分かりやすく
- 具体例を日本の読者にも理解しやすく
- 著者の温かく正直な語り口を損なわずに
また、翻訳中に著者のLaraさんと直接やり取りする機会もいただき、本書への理解を深めることができました。
翻訳活動の様子
私は、翻訳活動中に、日々の業務でクライアント企業のチームやリーダーと向き合う中で、「この本の内容を日本の皆さんと共有したい」という想いがどんどん強くなってきました。
週末や早朝、夜の時間を使って:
- 翻訳作業
- レビューとディスカッション
- 著者とのコミュニケーション
- 出版社との調整
を重ねてきました。時には深夜まで「この表現はどうだろう?」「この日本語でニュアンスが伝わるだろうか?」とディスカッションしたことも、今では良い思い出です。
このプライベートプロジェクトを通じて、私自身も大きく成長することができたと感じています。
翻訳という作業を通じて本書の内容を深く理解し、それが結果として、日々のアジャイルコーチとしての仕事の質の向上にもつながっていることを実感しています。
個人の情熱を持って取り組むプロジェクトが、プロフェッショナルとしての成長を促進する。そんな好循環を体験できたことも、このプロジェクトの大きな収穫でした。
アジャイルとの共通点
アジャイルコーチである私がこの本に強く共感したのは、その根底に流れる「人間中心」の哲学です。
アジャイルマニフェストの第一の価値観「プロセスやツールよりも個人と対話を」と、この本のアプローチは完全に一致していると思っています。
チームの成功は、プロセスや手法だけでは実現できません。一人ひとりの人間を理解し、信頼関係を築き、共に成長していくこと。それが本質だと、この本は教えてくれます。
どんな人におすすめか
- チームのマネージャーやリーダー
- 初めてマネジメントの役割に就いた方
- アジャイルコーチ、スクラムマスター、アジャイル実践者
- 人を大切にする在り方や対話の方法を学びたいすべての方
最後に
翻訳作業を通じて、私自身も多くのことを学びました。
この本が、日本の多くのリーダーやマネージャーの皆様の、日々の悩みに寄り添い、具体的なヒントを提供できることを願っています。
そして、一人でも多くの方が、より人を大切にするための在り方や対話の実践者となり、より良いチームづくりに貢献できることを心から願っています。
書籍情報
- タイトル:レジリエントマネジメント 荒波に立ち向かい、困難を乗り越えるチームの育て方
- 著者:Lara Hogan
- 翻訳:浅野、梶平、田代、森田
- 出版社:マイナビ出版
- 発売日:2025年10月27日
- Amazon URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4839985111