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セミナー「Collaboration Canvas Vol.1 開発ベンダー視点で解説!システム開発を成功に導くための鍵」を開催しました!

セミナー「Collaboration Canvas Vol.1 開発ベンダー視点で解説!システム開発を成功に導くための鍵」を開催しました!

【告知】5月29日(木)に「Collaboration Canvas Vol.2 IT知識ゼロから始める!AIで描く、あなたのビジネスアイデア実現ワークショップ」を開催します!詳細は記事末尾をご覧ください。

2025年1月28日、WeWork Ocean Gate みなとみらいにて「Collaboration Canvas Vol.1 開発ベンダー視点で解説!システム開発を成功に導くための鍵」を開催しました。ご多忙の中、ご参加いただいた参加者の皆様に心より感謝申し上げます。

「システム開発を成功に導くためには、発注者様と受注者の良好な協力関係と円滑なコミュニケーションが不可欠である」というテーマのもと、開発ベンダーの視点からプロジェクトを円滑に進めるための心構えやポイントについてお話ししました。

第一部 「コミュニケーションとアジャイル」

セミナーの前半は、弊社のアジャイルコーチの梶平よりシステム開発におけるコミュニケーションの大切さとアジャイルについてご説明しました。

弊社アジャイルコーチ 梶平による説明の様子

撮影場所:WeWork Ocean Gate Minatomirai

システム開発においては、作りたいものが何なのか、どのようなリスクがあるのか、進捗はどれくらいかなどといったことを伝え合う必要があります。しかし、 伝えること、理解すること は非常に難しいことです。

ここでコミュニケーションの難しさを体感いただくために簡単なワークショップを行いました。一名の参加者の方に一枚の絵を見ていただき、その絵に何が描かれているのかを言葉だけで説明していただきます。他の参加者の皆様にはその説明だけを頼りに絵を描いていただきました。

説明者の方による的確なご説明により、多くの方が説明された絵とほとんど同じ絵を描くことができました。しかし、細部を見ると、位置や形、描かれている場所に違いがありました。

このように自分の意図を正確に伝え、相手に完璧に理解してもらうことは、実に難しいことです。私たちは普段のコミュニケーションにおいても、相手によく理解してもらえるように丁寧に説明したり、逆に相手の説明を真剣に聞いて理解しようと努めていたりするにも関わらず、どこかで認識のずれが生じることがよくあります。

システム開発の現場においても同じことが言えます。そして残念なことに、このようなコミュニケーションの行き違いが原因で、プロジェクトが失敗に終わってしまうことがあります。プロジェクト失敗の主な原因の約半分は、発注側の要件定義の不明確さと受注側の要件理解不足にあると日経クロステックの調査は指摘しています。

この問題を回避するためには、関係者間での緊密かつ継続的なコミュニケーションが不可欠です

米ハーバード大学で故野中郁次郎氏と竹内弘高氏により発表された論文『The New New Product Development Game』は、成功している製品開発の共通点を論じています。その中で提示されているリレー方式とラグビー方式という2つの開発方式をコミュニケーションの点で比較してみましょう。

「The New New Product Development Game」 図1を元に作図

1つ目のリレー方式は、製品開発を企画、実現可能性、試作、開発、試験、生産のようにいくつもの工程に分けて、各工程の専門家や専門チームが作業を行い、終われば次の工程に進みます。リレー走のようにバトンを受け継いで開発を進めていくことからこの名前で呼ばれます。専門家の作業範囲が明確な分業によって、一歩一歩地面を踏み固めるように確実に進めていけるというメリットがある一方で、手戻りが発生した場合は前の工程にバトンを戻すことになってしまいます。工程間でのコミュニケーションは限定的で、工程を一通り終えてから行うことになります。この方式ではコミュニケーションの範囲が狭く、工程内では深い議論を行えるでしょうが、全体的な視点に立った深い議論が難しくなります。

2つ目のラグビー方式は、各工程を厳密に分けるのとは対照的に、前段が完了していなくても次の工程に着手していきます。この方式には、部分的にでも次の工程を進めることで、前の工程にフィードバックを提供できるというメリットがあります。ラグビーでボールをパスしあうように、工程の間を行ったり来たりを繰り返すイメージから名付けられています。このためには、各工程の専門家が1つのチームとなって、緊密なコミュニケーションを取って進めていく必要があります。フィードバックを反映する際や手戻りなどの課題が発生した際には、専門家が知識を持ち寄って対処します。また、最終的に製品を利用する消費者、原料や部品を提供する供給者の意見も参考にします。緊密なコミュニケーションを必要としているため、チーム内での意見の対立のような緊張も起きやすいという特徴があります。この方式ではコミュニケーションの範囲が広く、様々な意見を元に判断を行えます。チームメンバーは自分の専門を超えて、全体的な視点に立った本質的な課題について深く議論できます。

成功している製品開発の現場では、ラグビー方式が採用されているといいます。緊密なコミュニケーションによって、チーム全員が製品を深く理解したうえで課題に立ち向かうことができます。

システム開発の成功には、発注者と受注者の双方がシステムについて深く理解することが欠かせません。ラグビー方式のコミュニケーションの考え方は、要件定義の不明瞭さや受注側の仕様の理解不足という課題に立ち向かう一つの手段となります。

ラグビー方式の考え方を取り入れ、アジャイルにソフトウェアを開発し、価値を生み出すためのフレームワークに弊社でも採用している 「スクラム」 があります。

(詳細については、公式の解説書『スクラムガイド』が参考になるかと思います)

スクラムは透明性、検査、適応という三本柱を前提としています。

  • 透明性:プロセスや作業を、その作業を行う人とその作業を受け取る人に見えるようにします。
  • 検査:作成物と合意されたゴールに向けた進捗状況を、頻繁かつ熱⼼に検査するようにします。
  • 適応:プロセスのいずれかの側⾯が許容範囲を逸脱していたり、成果となるプロダクトが受け⼊れられなかったりしたときには、適⽤しているプロセスや製造している構成要素を調整するようにします。

これらの前提に基づき、スクラムでは開発工程を「スプリント」という短い期間に区切り、様々なイベントや作成物が定義されています。例えば、スプリントで実施する作業の計画をチーム全体の協働作業によって作成する「スプリントプランニング」、スプリントで行う作業がリアルタイムに反映される「スプリントバックログ」、品質と効果を高める方法を計画する「スプリントレトロスペクティブ」、スプリントの成果を検査し、今後の適応を決定する「スプリントレビュー」などがあります。

これらのイベントはいずれもチームのコミュニケーションを促進してくれます。コミュニケーションには困難が伴う事が多々ありますが、スクラムにはそれを支援する実践的な方法が組み込まれています。

第一部では、弊社アジャイルコーチの梶平よりシステム開発におけるコミュニケーションの難しさと重要性を説明いたしました。システム開発の成功のためには緊密なコミュニケーションが不可欠であり、スクラムはそのための有効なフレームワークとなります。

第二部 「トークセッション」

セミナーの後半では、参加者の皆様を交えて、年齢や関わったプロジェクトの異なる複数の弊社社員とのトークセッションを行いました。

撮影場所:WeWork Ocean Gate Minatomirai

開発を担う若手のエンジニア、プロジェクトを成功に導くプロジェクトマネージャー、そしてお客様との窓口となる営業担当といった様々な立場の社員が登壇し、それぞれの視点の意見をご紹介しました。

当日のセッションからいくつかの対談をご紹介いたします。

システム開発会社が大切にしていること

  • ベテランPM 若杉お客様とのコミュニケーションはとても大切にしています。ここがうまくいくかどうかが、プロジェクトの成否の大きな分かれ道となります。また、システムは作って終わりというわけではなく、継続的な改善が必要となります。そうした改善へのサポートも大事だと思っています。
  • PM/営業 石上 : PMBOK『プロジェクトマネジメントの12の原理・原則』 に大切なことがよくまとまっています。特にリスクに備えておくことが大切です。リスクとは、遅延やコスト増大といった悪影響を招く不確実性のことを指しています。影響の大きなものについて早めに対処していくことが重要です。発注側と一緒にリスクに向き合えるような関係を作っていきたいと思っています。
  • 若手エンジニア 岡本技術選定が大切だと思っています。機能を実現できるのかという点は当然ですが、コストがどの程度かかるのか、将来的な継続性があるのかという点も考慮しています。また、ソフトウェアの規模が拡大するにしたがって、当初の設計とうまく噛み合わない部分が出てきたり、納品を重視してプログラムのメンテナンス性が損なわれたりすることがあります。そうした技術的負債があると、新機能の追加に時間がかかってしまったり、バグにつながったりすることがあり、定期的に解消していくことが大事だと考えています。

システム開発で必要なものとは

  • ベテランPM 若杉 : 典型的には要件定義・分析、設計、テスト、環境構築、プロジェクト管理、保守・運用といった工程で進めていきます。
  • PM/営業 石上 : ここに載っていないものでいうと、例えばユーザに利用してもらうためにはまずシステムにたどり着いてもらう必要があり、その方法を考えることも開発の上では必要となるでしょう。また、システムの完成後も保守・運用が必要となりますが、誰が担当するのか、他の人が担当するのであればどうやって引き継いで行くのかということも考えなければなりません。要件定義では業務の流れを考えるのですが、業務がスムーズに流れる場合だけでなく、どこかで異常がある場合についても考慮が必要です。
  • 質問 : 何をどれくらい揃えたらシステムを作ってもらえるのでしょうか?どうした会話をしていけばシステムを作れるのでしょうか?
    • 若手エンジニア 岡本 : どういうものが作りたいか、どれくらいの期間で作りたいか、どれくらいのお金が用意できるのかというところが分かっていれば、相談いただければと思っています。
    • ベテランPM 若杉 : コミュニケーションの話にもつながってきますが、はじめにお客様が本当に実現したいことは何なのかをよく話し合うことにしています。よく話し合うことが、良い開発、良い製品につながると思っています。
    • 来場者の方 : 何を使ってくださいと伝えるよりも、何をしたいんだということを伝えることが大事なのだと理解しました。
    • ベテランPM 若杉 : お客様から聞き出すことも私達の仕事だと考えています。こうしてほしいという要望があれば伝えていただければと思います。もしもより良いものがあればご提案できればと思っています。

最後に

今回のセミナーが皆様の今後のシステム開発プロジェクトを成功に導くための一助となれば幸いです。

株式会社アットウェアは 「システムで人々をしあわせにする」 を掲げ、AWSとJavaとアジャイルを組み合わせたシステム開発を行っております。システムをどう作っていくのかというご相談、システム開発、システムの維持・改善まで、包括的にご支援させていただきます。弊社はお客様がシステムに求める本当のニーズを理解し、お客様と心を一つにして共にシステムを育てていく「恊働型SI」を目指しております。

本セミナーの「Collaboration Canvas」というタイトルは「恊働」の精神のもと、来場者の皆様とコラボレーションした未来を描いていきたいという思いから名付けました。今後もビジネスを皆様と共に描いていけるようなセミナーの開催を企画してまいります。

システム開発に関するご相談や、今回のセミナー内容についてさらに詳しくお知りになりたい点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。

【次回開催のお知らせ】

第二回となる、 Collaboration Canvas Vol.2 を開催いたします。

テーマは「IT知識ゼロから始める!AIで描く、あなたのビジネスアイデア実現ワークショップ」です。

「やりたいことはたくさんあるけれど、ITのことはよくわからない……」
「システムを作りたいけれど、どう伝えたらいいのかわからない……」

そんな悩みを持つ方々のためのワークショップを開催します!IT初心者の方でも、AIの力を借りてビジネスアイデアを具体化させていくことができます。

日時:2025年5月29日(木)18:30 〜 20:00
場所: Ocean Gate みなとみらい 8階 WeWork(地図
参加費:無料

ワークショップ終了後には、懇親会を予定しております。ワークショップの内容に関する疑問点や、システム開発に関するご質問など、普段なかなか聞くことのできないような話題についても、この機会にぜひお気軽にご質問ください。

参加申込みはこちらから!